

1 比較広告について
同業他社を引き合いに出した広告を比較広告といい、日本ではあまり例がありませんが、欧米では、かなり多くの事例があります。
例えば、かつてマクドナルドはドイツで、バーガーキングを貶めるような内容のCMを公開しました。具体的には、男の子がマクドナルドのポテトやハンバーガーを食べていると友達に奪われてしまうのですが、バーガーキングの袋で隠してマクドナルドのポテトやハンバーガーを食べていると奪われず、男の子がしめしめといった表情を浮かべるという内容です。
日本の大々的な比較広告としてよく例に挙げられるのがペプシのコカ・コーラを引き合いに出したCMです。スクリーンに「ペプシNEX ZERO」と「コカ・コーラ ゼロ」が映し出され、檀上の女性がペプシ!と叫び、続けてどちらが美味しいかというアンケート結果として、スクリーンに「61%、39%」というペプシ勝利の円グラフが写し出されます。本CMは結論として法には触れないという見解が優勢ですが、こういった比較広告には、一定の法規制があります。
2 景品表示法による規制
景品表示法は、消費者に、実際の商品の品質よりも優良だと誤解させたり、安いと誤解を招かせたりするような広告は、優良誤認表示(景品表示法第5条1項)、有利誤認表示(景品表示法第5条2項)などの「不当表示」として、景品表示法の問題が生じます。
たとえば、野菜ジュースの野菜含有量が業界トップでないにも関わらず、含有量1位と表示した場合、有利誤認表示として景品表示法第5条第2項に違反することになるでしょう。
景品表示法違反があった場合、消費者庁や各都道府県は、広告の表示主体に対し立ち入り検査を行ったり、広告を差し止めたりする権限があります。

3 景品表示法上の比較広告に関するガイドライン
消費者庁が公開している「比較広告に関する景品表示法上の考え方」において、「競争事業者の商品との比較そのものについて禁止し、制限するものではない」とあり、日本において比較広告が一律に禁止されているわけではないことが窺い知れます。
消費者庁が発表している比較広告に当たらないための要件は以下の通りです。
- 比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること
- 実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること
- 比較の方法が公正であること
「内容が客観的に実証されている」といえるためには、実証が必要な範囲において、適切な実証の方法で、主張しようとする事実が存在すると認識できる程度まで実証がなされていること求められています。先のペプシの例のように、アンケート結果であっても、①を満たすことは可能です。
②について、引用が求められるのは、調査機関、調査時点、調査場所等のデータと考えられます。
③は、同じ条件で比較することを求めています。例えば、野菜ジュースを販売している会社が、自社のグレードが高い野菜ジュースを他社の通常のタイプの野菜ジュースと比較し、自社の商品の方が優秀であることを強調した場合、③を充足しないことになるものと考えられます。
4 不正競争防止法による規制
比較広告は、不正競争防止法の規制にも服します。
不正競争防止法第2条第1項第21号は、「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為」を不正競争としており、このような行為があった場合、損害賠償請求や差止請求の対象となります。
例えば、野菜含有量が350グラムある野菜ジュースを販売している企業が、同じく野菜含有量が350グラムある野菜ジュースを販売している他社を引き合いに出して、当該他社の2倍の含有量がある旨の広告を出すことは、不正競争防止法上の不正競争となり、かかる広告は差し止めの対象となり得ます。
規制対象としては、景品表示法と重なり合う部分が大きいですが、景品表示法が消費者を保護する法律であるのに対し、不正競争防止法は、事業者を保護しており、それぞれ別の目的をもって比較広告を規制しています。